- 議論の整理
詩人や作家としてだけではなく、自然科学者や政治家でもあったゲーテはその多才さ故に一人の人間として統一的に理解するのが困難であると言える。多くの人間から影響を受けた彼の様々な著作や業績の根幹を捉える為の手立てとして、彼の宗教的思想への理解は有効である。よく知られているように彼は汎神論者であり、スピノザ論争にも参加している。自然のうちに神を見出す思想は後のドイツ・ロマン主義という一大潮流を起こすきっかけとなるのだが、ゲーテの思想はロマン主義のものとは異なっている。
- 問題発見
ゲーテが信じていたスピノザ的汎神論において、自然の法則は絶対に変えることのできない不変の真理であると同時に、人間の考えるあらゆる倫理を超越するものであった。だが、この世界観における問題点は不条理な人間の感情の存在である。完璧な自然から生まれたはずの人間がもつ、あまりに不完全な感情は一体どこから生まれたものだとゲーテは理解していたのだろうか。
- 論証
そもそもゲーテは思想家である前に詩人である。従って、人間の感情を否定することは決してできないことに注意すべきである。中井はゲーテの著作から「デモーニッシュなもの」の観念を取り出し、これが自然の必然性から人間のもつ偶然性を生み出すものだとゲーテは位置づけたと論じている。「デモーニッシュなもの」は「神性」と同じ次元に存在するものであり、ゲーテはそれを肯定も否定もしていない。私はこのようなアンビバレントな解釈がそのままゲーテの葛藤を反映していると考える。そこで、 本研究ではこの点を踏まえてゲーテの著作から「デモーニッシュ」という概念を抽出して検討していきたい。
- 結論
上記研究を行うにあたって、これまで貴学においてゲーテに関する様々な論考を執筆してきた中井教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
中井真之 (2009) 「ゲーテにおける「デモーニッシュなもの」-「神性」の理解との関わりにおいて-」『ドイツ文学』 138, 123-138
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